たけうちファミリークリニック

名古屋市昭和区 の たけうちファミリークリニック
(内科・外科・消化器内科・小児科)

〒466-0858 愛知県名古屋市昭和区折戸町5-45
TEL:052-752-1780
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摂食嚥下マニュアル(東海摂食栄養フォーラム編)

誰でもわかる、できる摂食嚥下評価
 
1. 問診 
患者が無理なら、家族・介護者に確認。聖隷式嚥下質問表は、Aが一つでもあれば嚥下障害、Bが一つでもあれば疑い。

聖隷式嚥下質問票:
1.肺炎と診断されたことがありますか?        A 繰り返す B 一度だけ C なし
2.痩せてきましたか?                A 明らかに B わずかに C なし 
3.物が飲み込みにくいと感じることがありますか?   A よくある B ときどき C なし
4.食事中にむせることがありますか?         A よくある B ときどき C なし
5.お茶を飲むときにむせることがありますか?     A よくある B ときどき C なし
6.食事中や食後、それ以外の時にものどがゴロゴロ(痰がからんだ感じ)
 することがありますか?                          A よくある B ときどき C なし
7. のどに食べ物が残る感じがすることがありますか?  
                            A よくある B ときどき C なし
8. 食べるのが遅くなりましたか?                  A たいへん B わずかに C なし
9. 硬いものが食べにくくなりましたか?           A たいへん B わずかに C なし
10.口から食べ物がこぼれることがありますか?    A よくある B ときどき C なし
11.口の中に食べ物が残ることがありますか?         A よくある B ときどき C なし
12.食物や酸っぱい液が胃からのどに戻ってくることがありますか?                      
                                              A よくある B ときどき C なし
13.胸に食べ物が残ったり、詰まった感じがすることがありますか? 
                                            A よくある B ときどき C なし
14.夜、咳で寝られなかったり目覚めることがありますか? 
                                             A よくある B ときどき C なし
15.声がかすれてきましたか?(がらがら声、かすれ声など) 
                                                   A たいへん B わずかに C なし
  

2. 情報収集
1)主な症状
むせ:どういう食品でむせるか、食べはじめにむせるか、疲れるとむせるか
咳:食事中や食後の咳は多くないか、夜間の咳はないか
痰の性状、量:食物残渣はないか、食事を開始してから量は多くないか
喉頭異常感、食物残留感:部位はどこか
嚥下困難感:食物による差はあるか
声:食後に声の変化はないか、ガラガラ声ではないか
食欲低下:むせる、苦しいから食べないなど
食事内容の変化:飲み込み易いものだけを選んでいないか、食事の好みがかわったことはないか
食事時間の延長:口の中にいつまでも食べ物をため、なかなか飲み込まない                                                                                                                    
食べ方の変化:上を向いて食べる、汁物と交互に食べている、口からこぼれる
食事中の疲労:食事に伴う低酸素血症はないか
口腔内の汚れ:ひどい歯垢、食物残渣、口臭は口腔期の問題と関連があるか
体重減少、脱水、発熱:他の原因が不明なときは特に重要
誤嚥・窒息の既往

2)医師、看護師からの情報収集
・嚥下障害の原因となる疾患の確認(詳細はHP)
・発症経過月数:脳血管障害の場合0-3ヶ月
  多発性脳梗塞の場合は発症1年以上経過しても要注意
・誤嚥性肺炎の既往・熱型
一度誤嚥性肺炎を起こしたものは反復して起こしやすい
・原因疾患を特定できないのに炎症反応値などが高いもの
・体重の増減…体重減少が継続しているもの  
・服薬内容…抗てんかん薬・向精神薬・抗パーキンソン薬などは嚥下機能を低下させることもある(詳細はHP)

3)患者の観察
・呼吸状態:頻呼吸、無呼吸、努力様呼吸
・音声:ごろごろ・ゼロゼロ、ガラガラ声、声がれ
・会話明瞭度:1全てわかる(誤嚥率25%)
              2時々わからない(誤嚥率30%)
              3内容がわかっていればわかる(誤嚥率48%)
              4時々わかる(誤嚥率50%)
              5全くわからない(誤嚥率67%)
・精神機能:意識障害、発動性低下、注意障害の程度は?
・体幹・頸部の姿勢:安定しているか、前傾していかないか
・歯茎と頬の間や軟口蓋に食物がたまっていないか
・唾液嚥下時の咳・むせはないか
・流涎・頻回の排痰、自力排痰困難はないか
・頸部嚥下音聴診・肺野呼吸音聴取

3. 簡単な嚥下評価
(1)反復唾液飲みテスト
(2)改訂水飲みテスト
(3)フードテスト
(4)パルスオキシメーター
 可能であれば、VEにて再評価も必要
困った時は、専門家に必ず相談すること
 
☆ 誤嚥性肺炎のチェックポイント
✓ 食事中・後に、SpO2 低下
✓     〃    呼吸数増加・頻脈
✓     〃    声がれがある
✓     〃    顔が紅潮する
            発熱がある
            異常に汗をかく
✓     〃    むせる、咳をする、痰が汚い
✓     〃    のどがゴロゴロいう
✓     〃    気管支狭窄音が聞こえる
✓ 食事後に、口腔内に食物残さがある、においがする
✓    〃   舌が栄養剤の色、口腔内の糖強陽性
✓ 食事時間が長くなる、食後がつかれる
✓ 食事をいやがる、食事量が減る、好みがかわる
✓ 原因不明の発熱を繰り返す 


 
誰でもわかる、できる安全な食事介助
 
1)姿勢の工夫
①30度リクライニング位
・食べ物の取り込み、送り込みに障害のある人では30度にすることで重力の利用ができ、気管が上で食道が後ろになることから誤嚥が起こりにくくなる。
②頸部前屈
・頚部が伸展していると咽頭と気道が直線になり、気道が開き誤嚥しやすくなる。頸部前屈すると咽頭と気道に角度がついて誤嚥しにくくなる。
・前頸筋群がリラックスし、嚥下筋の働きがスムーズになり嚥下に有利に働く。
・枕を二つし、頚部が伸展しないようにします。あごから胸まで3-4横指が入るくらいが目安。

2)水分の摂取
液体はさらっとし、まとまりが悪く、咽頭に流れるスピードが速いため、誤嚥しやすい。粘度(とろみ)によって、まとまりをよくし、咽頭に流れ込む速度をゆっくりとすることで、嚥下の準備ができ、タイミングが取りやすくなる。
増粘剤のリスク:増粘剤は、①商品によってとろみのつき方が違う、②溶かす温度や時間、溶解方法によって硬さが変化するため、適切で均一なとろみが重要となります。
適切な濃度:一般的には、スプーンですくって落としたときに、軽く糸を引く程度が適切とされています。

3)一口量
・水のみテストやVF検査などの状況である程度予測するが、食物形態で異なります。
・少量の方が誤嚥しにくいが、感覚低下のある方は少なすぎる量では嚥下反射が誘発されないことがあります。
スプーンの選択は、小さく、薄く、平たく、柄の長いスプーンが最適。持ちやすく、滑りにくいもの。大きなスプーンでは取り込みしにくく、誤嚥しやすいので、はじめは小さなスプーンで開始し、徐々に能力に合わせて大きなものに変えていきます。

4)摂取方法                                                                             
・ 複数回嚥下
 一口につき2 回以上嚥下することで咽頭残留を除去し,嚥下後の誤嚥を防止する方法。
 一回嚥下した後,咽頭残留感の有無にかかわらず,2 度以上の複数回の空嚥下を行う。
・ 交互嚥下
 異なる形態の食塊が交互に入ることが,咽頭残留の除去に物理的に有利に働く。特に,べたつきやぱさつきのある食物の後にゼラチンゼリーを与えると,口腔残留や咽頭残留がクリアされる。このことから,食事の最後はゼラチンゼリーで終了するとよいとされている。咽頭残留に限らず,口腔や食道の残留にも効果がある。 
 固形物と流動物を交互に嚥下させる.汁物でむせる症例では,汁物をごく少量とするのがコツ。べたつくものとゼラチンゼリーや残留の少ないゼリーとの交互嚥下がよく行われる。水分誤嚥のない場合には水が最も残留が少なく,かつ残留した場合でも汚染につながらないため,食事の最後には水(ないしお茶)を嚥下するとよい。
 ・ 頸部回旋(横向き嚥下)
 頸部を回旋すると咽頭腔の形態が変化し,食塊が咽頭の非回旋側へ誘導される.また,非回旋側の食道入口部静止圧が低下することも知られている。これを応用して,咽頭残留の軽減や誤嚥の防止を期待する手技である。
 咽頭機能の悪い側(患側)に頸部を回旋後,嚥下する。回旋の程度には定説がない.十分かつ努力を要しない程度の回旋角度が適切と考えられる。回旋のタイミングは捕食前からが確実であるが,口腔保持ができて咽頭流入に伴う誤嚥のリスクが少なければ,嚥下直前に回旋しても効果がある(嚥下前頸部回旋)。また,嚥下後に残留がみられたとき,非残留側に回旋して空嚥下を行って残留の除去を試みる方法もよく行われる(嚥下後回旋空嚥下).仰臥位では,回旋側が下側になり,食塊が重力で回旋側に誘導されるので注意する.このときは,健側を下にした側臥位を併用して対処する.
 ・ 一側嚥下
 頭部と体幹を健側に傾斜させると同時に,頭頸部を患側に回旋させる.
 ・ 頸部突出法
 下顎骨(舌骨)喉頭連結術(いわゆる棚橋法)術後患者において,下顎を前突させることにより連結された喉頭を前方に引き出し,食塊の送り込みに合わせて食道入口部を意図的に開く方法。
 頸部を前屈した位置から,食塊の咽頭への送り込みのタイミングに合わせて顎を前方に突き出す。下顎の突出を促す方法として頬杖をつく方法もある。
注意点など
 本法は基本的に棚橋法の術後に行う方法であるが,輪状咽頭筋切断術だけの場合も頸部突出はかなり有効である.手術を受けていない症例では無効であるが,時にこの方法で食道入口部が開く場合がある.実施する場合はVF などで評価して行うことを推奨する.
 ・ 息こらえ嚥下
 嚥下中の誤嚥を防ぐと同時に,気管に入り込んだ飲食物を喀出する効果がある。
 飲食物を口に入れたら,鼻から大きく息を吸って,しっかり息をこらえて,飲食物を飲み込み,咳払いをする,あるいは口から勢いよく息を吐き出す。意識的に息こらえをすることにより,嚥下動作直前から嚥下動作中に声門を閉鎖する。
 ・ K-point 刺激
 偽性(仮性)球麻痺患者に対して嚥下反射を誘発したり,開口を促したりすることができる.
 嚥下を誘発する場合は,K-pointを湿らせた綿棒や凍らせた綿棒(アイスマッサージ棒),スプーンや舌圧子で軽く刺激(さわる程度)する。咬反射のために開口してくれない場合,Kpoint刺激をしている間は開口が促されるために,口腔ケアができる。


5)食器の工夫
先ず、食器を置くマットは、食器が滑らないものを使用、または滑り止めのついた食器を使用。食器は、傾斜がついて片側が深く、皿の口に返しがついているものや、食事量がわかりやすい目盛りのあるものなどがあります。食器はできるだけ、白飯が認知しやすい濃い色の食器を用いることも、先行期の障害患者には有用です。

6)介助者の注意点
・患者と同じ目の高さで介助する(患者が見上げることで、頸部が後屈しないように)。
・患者の覚醒を十分確認する。
・患者に食事への準備・自覚するタイミングを十分にみはからう。
・食物が口にある間と嚥下直後は話しかけない。
・摂食のペースを守るために介助者もゆったりとした態度で接する。
・材料名・料理名などを知らせ食欲促進に努める。
・介助する人が統一した方法で行えるようにする(ベッドサイドに摂取方法を掲示するなど)。
・激しい咳やむせ、呼吸の変化があったときには一時食事を中止する。
・疲労の様子を見ながら摂食をすすめる(30分くらいが目安)。
・食後すぐは体を起こしておく(逆流を防ぐため)。

7)認知症患者の食事介助(特に誤嚥予防)
✓ 覚醒は良好か?
   薬剤の副作用のチェック
   環境、特に光環境の調節による覚醒の促し
   コミュニケーションなどによる覚醒の促し
   家族の訪問や介助などで覚醒の促し
   睡眠・生活リズムの改善
✓ 体調不良や発熱はないか?疲れていないか?
✓ 食事であることが理解できているか?または、おなかがすいているか?
   五感の活用
    視覚…盛り付け、食器やテーブルクロスの色、「食べる」の文字、食べるイラスト、スタッフが一緒に食べる、スタッフのエプロン、マスコット、暖色系の使用
    嗅覚…食欲をそそる香り
    聴覚…揚げ物を上げる音、グラスの音など、心地よい音楽
    味覚…濃い味
    触覚…食材にふれる
   好物の活用
   記憶の継続性(なじみの食器やテーブル、いすなど)
✓ 気になるものが周りにないか?食事に集中できているか?
   注意を引く盛り付け、色彩
   食欲をそそる香り
   好きな仲間、スタッフ
   食事前のルーティン
✓ 口の中はきれいか?義歯は大丈夫か?
  味覚障害、嗅覚障害はないか?
✓ 食事を嫌がっていないか?
   かならず、一品は好物をいれる
   思い出のある食事をとりいれる
✓ 食べる姿勢はできているか?
   足底はしっかり床につける
   テーブルは肘の高さ
   頸部はやや前屈
   膝関節は90度屈曲
   イスとテーブルの距離が適度
✓ どれからたべていいかわからない
   コース料理方式
   ワンプレート方式
   弁当箱の使用
✓ 食具(おはし、スプーンなど)の使い方がわからない
   食具をいつも同じ場所におく
   食具を手渡す
   おにぎり、サンドイッチなど食具を使用しなくてもすむ食形態にする
✓ 食べるペースが違う人がいないか?
✓ 他人の食事を食べる、邪魔をする
✓ 詰め込み、過食はないか?

 
誰でもわかる、できる嚥下調整食

1.嚥下調整食づくりで注意が必要な食材(例)
付着性において
注意するもの

 
  • のり、わかめ、おぼろ昆布のように口の中やのどに張り付きやすいもの
  • 葉もの野菜の葉の部分やきゅうりのうす切りなど
かたさにおいて
注意するもの

 
  • 肉の塊、いか、たこ、干もの、ごぼう、セロリ、りんごなど噛む力が必要なもの
 
凝集性において
注意するもの

 
  • 固ゆで卵や焼いた鮭のように、口の中でまとまりにくいもの
  • ふかし芋、クラッカー、パン、クッキーのように水分が少ないもの
  • トースト、たけのこ、せんべい、サブレ、かりんとうのように噛むと口の中でばらけやすいもの
 
2.嚥下調整食づくりで調理時のポイント
  1. 下処理の段階で、皮を厚くむく。隠し包丁を入れる。下茹でするなどの工夫が必要である。
  2. 油脂類を加えて口あたりをなめらかにする。
  3. 素材同士をつなぐ「つなぎ」を活用する。(例:卵、山芋、里芋、牛乳、マヨネーズ等)
     
3.調理法別のポイント(嚥下調整食4レベル)
 
煮物

 
  • 食材を厚めにむき、一口大くらいの大きさに切って、多めの煮汁でしっかりとやわらかく煮る。
  • 煮汁にとろみをつける。圧力鍋を利用する。
揚げもの
 
  • 天つゆに浸す。食材は下茹でしておき、フリッターや天ぷらなどにする。また、揚げてから蒸す、天つゆに浸すなどの工夫が必要である。
炒めもの
 
  • 食材は下茹でしておく。調理の最後にあんを絡める。
蒸しもの
 
  • 調理の最後にあんをかける。
和えもの
 
  • 食材はやわらかく茹でる。葉ものは小さく切って和え衣であえる。
  • 白和え、マヨネーズ和え、練りごま和えなどなめらかに仕上がるものと和える。
酢の物
 
  • 酸味が強すぎないように調整する。すりおろした食材と和えると食べやすい。
 
4.嚥下調整食を美味しく料理するポイント(嚥下調整食4レベル)
①穀類〔ご飯の場合〕のポイント
ご飯のかたさは,対象者の障害の程度や好みに合わせる。卵かけごはんや雑炊などは汁を十分に吸わせると食べやすい。ご飯が食べやすいように,のり佃煮,梅干など美味しく食べやすい一品を用意する。ゼラチン粥は,程よいかたさ,食塊が形成しやすく食べやすい。
材料〔一人分〕米 50g  水 110g 介護用ゼラチン〔伊那食品〕 0,,8g
作り方:・米は洗って炊飯器に水と入れて浸漬する。・炊く前に,介護用ゼラチンを入れて良く混ぜ、粥モードで炊く。・途中でかき混ぜないと,介護用ゼラチンが釜の下のほうに沈殿するので15分に1回程度かき混ぜる。
②肉料理のポイント
肉は,良質のたんぱく源であるが,肉料理は噛み切りにくく食べづらいため工夫が必要である。脂身が多いほど嚥下調整食としては,使用しやすい。ひき肉は二度引きしたものが使いやすい。下処理時には,筋を切り包丁でたたく。切れ目を細かく入れ一口大に入れる。たんぱく分解酵素を含む生姜,パイナップル,キゥーイなどに漬け込む。揚げ物は,揚げた後にたれやつゆに浸してやわらかくする。
③魚料理のポイント
魚は,良質のたんぱく源であり動脈硬化を予防する効果があるといわれているDHA,EPAを多く含む。むつ,めばる,ぶり,はまち,したびらめなどは加熱してもあまり固くならないため利用しやすい。焼き魚は,早くから塩をすると固くなるので調理の直前にふる。ホイル焼きは,下ゆでした野菜などと一緒に包んで蒸し焼きにするとしっとりと出来る。煮魚は煮汁を多めに作りとろみをつける。
④卵料理のポイント
卵は,栄養バランスの良い食品で,スフレオムレツ,スクランブルエッグ,温泉卵,だし巻き卵,具なし茶碗蒸しなどは嚥下調整食に利用しやすい。しかし,固ゆでした卵黄やいり卵は,パサパサしてポロポロしているので食べづらい。卵は,料理のつなぎとして料理自体をやわらかく仕上げるため使用頻度は高い。
⑤大豆・大豆製品のポイント
大豆製品の中でも,絹ごし豆腐,充填豆腐,ひき割り納豆などは利用しやすい食品である。高野豆腐の煮物は,煮汁と高野豆腐が口の中で分かれるため誤嚥しやすいので汁にとろみをつけるなどの工夫が必要。
⑥野菜料理のポイント
野菜は,ビタミン,ミネラル,食物繊維が多いため積極的に使用したい食品である。いも類,かぼちゃ,にんじん,大根,玉ねぎ,なす,白菜,プロッコリーなどは嚥下調整食に向くが,ごぼう,たけのこ,蓮根等はやわらかく茹でて細かく刻んでとろみをつけるかピューレ状にして利用。
⑦果物のポイント
バナナは,フォークなどでつぶしてヨーグルトなどで和える。いちごやキゥーイの小さな種が義歯に挟まりやすいので小さく切りつぶす。酸っぱいかんきつ類は,むせやすい。すいかは,口の中で果汁と果肉が口の中でばらばらになると誤嚥しやすい。ピューレ状にして利用する。
嚥下調整食は、通常の食材だけでは栄養量が不足する場合がある。効率的に栄養量が確保できる市販品や冷凍の弁当など多数販売されている。スーパー等での販売でなく通信販売が主流である。
ヘルシーネットワーク    http://www.healthynetwork.co.jp/
クリニコ アクトケア    http://www.clinico.co.jp/ec/
明治栄養ケア倶楽部     http://www.meiji.co.jp/meiji-eiyoucare/products/purpose.html
ミールタイム        http://www.mealtime.jp/shop/items/care
あいーと          http://www.ieat.jp/

 
誰でもわかる、できる口腔ケア、嚥下リハ
 
1)在宅でできる口腔ケア
口腔ケア前の準備、確認
1. 体調の確認と声かけ、必要物品の準備
2. バイタルサイン
3. 体位の確認と設定
体位:嚥下障害がある場合、最も安全な体位。本人がリラックスできるような体位を選択。
体幹固定:クッションやタオルなどを利用して、できるだけ体との接触面積を大きくし安定を図る。
頭頚部の位置:頸部が後屈していないか、可及的に前屈が誤嚥のリスクを下げる。片麻痺の場合健側を下にする。
4. リラクゼーション
口腔のみでなく全身的なマッサージやリラクゼーションを施行し、緊張を緩和する。開口が難しい方などは事前にリラクゼーション、マッサージなどを行うことにより筋緊張がほぐれる場合もあります。アロマテラピーや音楽など患者さんのリラックスできる環境設定も効果があるときもあります。唾液腺のマッサージなどで口腔内の湿潤状態を作ることができます。
5. 頸部聴診
6. 保湿
①口腔ケア前の保湿剤塗布
特に口腔乾燥が著明で痂皮が固着している場合は口腔ケアを行う10分程度前に保湿剤を塗布しておくことで痂皮が除去が容易になる。口腔乾燥などで接触により出血したり、痂皮が多く除去が困難な場合は、事前の保湿が効果的です。
②口腔ケア後の保湿剤塗布
口腔内の保湿感を維持させるのが目的である。嚥下機能が低下した患者の場合には、次回の口腔ケア時に前回の口腔ケア後に塗布した保湿剤の除去が必要になる。

口腔ケアの実施
1、口腔ケア
視野の確保:開口器やアングルワイダーの使用や片方の手を頬部の展開などに用いる。
開口の維持:開口維持が難しい場合、開口器や開口棒、歯ブラシにガーゼを巻くなど工夫する。K-pointの刺激や口腔周囲のマッサージなども有効なこともある。
アセスメント:口腔内を観察し、う蝕や腫れ、カンジダなどの問題がないかチェックする。特に口蓋や奥舌に汚れが残存していないか確認する。
用具の取り扱いの基本:含嗽剤入りの水分などにつけてからよく水分をきって誤嚥させないように行う。保管時はよく洗浄し柄の部分を下にする。
動きの基本:必ず奥から手前に、小帯を避けて動かす。力を入れすぎない。順番を決めてケアしていない部分がないようにする。
器具使用の順番:くるリーナやガーゼ、スポンジブラシなど大まかな汚れを取る器具から開始。歯ブラシ、タフトブラシ、歯間ブラシ、フロスと小さな器具で細かいところをケアする。 汚れを回収するためにスポンジブラシなど大きめの器具を用いることもある。
歯ブラシによるケア:ペングリップで歯ブラシを持つ。歯に垂直に毛先を軽く当て振動させながら歯を一本一本丁寧に清掃する。歯周ポケットには歯ブラシを斜め45度に毛先を入れるようにして行う。
歯間ブラシやフロスによるケア:単独歯や歯の間が広い場合はタフトブラシや歯間ブラシを使用。歯の間が狭いところはフロスを用いる。しかし、やりすぎると歯肉を傷つける恐れがある。歯間ブラシは適度なサイズを選択することが重要で、歯肉に過度な圧力をかけず使用。歯間部に挿入し角度を変化させながら数回動かす。フロスは歯に沿わせるようにして軽く、数回程度引き上げる。充填物や詰め物が引っかかる時は無理に引っ張らず、横に引き抜く。
2、吸引、含嗽
ブラッシング等の施行により口腔内に細菌が散乱した状態にあるため、含嗽ができる人は十分に行ってもらう。できない人や嚥下障害がある場合は丁寧に汚れを拭き取ったり吸引により汚れを残さないようにする。口腔ケア時に吸引器を用いながら行ったり、吸引器付きの器具、ガーゼなどで水分の垂れ込みを防止する。咳嗽可能な場合は頻繁に咳嗽を行ってもらうことも重要。
3、義歯の清掃
流水下にて義歯ブラシ等を用いて滑りがなくなるまで清掃する。義歯は夜間洗浄後、水分につけて保管することが望ましい。ただし、咬合の関係で夜間用の義歯を装着しておく必要がある場合もある。義歯洗浄剤の使用は部分入れ歯や総義歯など義歯によって種類を選択する。全部床義歯用の洗浄剤を部分義歯に使用すると変色することもある。
4、口腔ケアの時間や程度
特に口腔ケアにかける時間に規定はない。綺麗になるまで行うことが重要。患者さんによっては体力的な問題から、完全にきれいにする前に疲労が見える場合もある。体調や体力、1日の活動の中のケアの時間を考慮しながら行う。

口腔ケア後の確認、評価、記録、報告、連絡
1、ケア後のバイタルサイン、頸部聴診など
2、説明、関係職種への連絡

2)在宅でできる嚥下・呼吸リハ
1.嚥下体操
 食事の前に口を動かしておくことで食べ易く、飲み込み易くします。気管に誤って食べ物が入ってしまう誤嚥の予防にもなります。
首のリラクセーション  (各10回ゆっくり行ってください)
  突っ張りを感じるまでゆっくり動かします。
 ①前後に ②左右に ③回します ④肩を持ち上げすとんと落とす。       
口唇の運動 (各10回程度繰り返してください)
 ①「う」すぼめる・「い」引く  ②大きく開ける・しっかり閉じる ③頬を膨らます・へこます。     舌の運動 (各10回程度繰り返してください) 
 ①出す・引っ込める  ②上・下  ③左・右     
発声練習  (各10回程度繰り返してください)
 ①パパパ  ②タタタ ③カカカ               
空嚥下
 唾をゴクンと飲んでください。うまく行えない場合は口腔内を少し湿らし、行ってみてください。
 2~3回ゴクンを行ってみてください。
2.氷を用いた嚥下訓練
 口に含んだ氷の冷刺激によって嚥下反射を誘発する.通称,氷なめ訓練と呼ばれる.
 小さめの氷を口に含み,溶けてきた水を飲み込んでもらう.氷の口腔内保持が困難な患者では,氷をガーゼで包んでデンタルフロスで縛って保持するなど,氷が咽頭に落ち込まないよう注意する。
3.アイスマッサージ
 凍らせた綿棒に水をつけ,前口蓋弓のみならず,舌根部や咽頭後壁の粘膜面を軽くなぜたり,押したりして,マッサージ効果により嚥下反射を誘発する方法。
4.頭部挙上訓練(シャキア・エクササイズ)
 舌骨上筋群など喉頭挙上に関わる筋の筋力強化を行い,喉頭の前上方運動を改善して食道入口部の開大を図る.食道入口部の食塊通過を促進し,咽頭残留(特に下咽頭残留)を少なくする効果がある。
1) 挙上位の保持(等尺性運動):仰臥位で肩を床につけたまま,頭だけをつま先が見えるまでできるだけ高く上げる。「1 分間挙上位を保持した後,1 分間休む」。これを3 回繰り返す.
2) 反復挙上運動:同じく仰臥位で頭部の上げ下げ(up and down)を30 回連続して繰り返す。
1)2)を1日3回,6週間続ける.なお,喉頭挙上筋群を徒手的に鍛える方法も有用。
5.ブローイング訓練
 吹く動作により鼻咽腔が反射的に閉鎖されることを利用して,鼻咽腔閉鎖に関わる神経・筋群の機能を改善させる。気管内圧を上昇させ,気道の虚脱を防ぐ効果や呼気持続時間を延長させる効果などが期待できる。
 コップに水を入れ,ストローでぶくぶくと泡が立つように吹く.うまく泡立たないときには指で鼻をふさいで介助し,徐々に介助を減らしていくとよい。さらに,ストローの太さや長さを変える,コップの水の粘度を変えるなどによって,難易度を調整する。ストローでコップの水を吹くかわりに,ろうそくの火や細く裂いたティッシュペーパーやおもちゃを吹いてもよい。
6.口すぼめ呼吸

 吸気は鼻から行い、呼気はくちをすぼめて、ろうそくの火を消すように「フーッ」とゆっくり息をはく。
吸気と呼気の比は、1:2くらいで行う。
 腹式呼吸 

 膝をたてて仰臥位にて、口すぼめ呼吸でゆっくりと息をはきながら、同時に腹部がしぼうむようにする。また、吸気は鼻からゆっくり吸いながら、腹部が持ち上がるように行う。腹部に手をあてて行う方法もある。

7.プッシング・プリング訓練
 押したり持ち上げたりといった上肢に力を入れる運動により,反射的に息こらえが起こることを利用して,軟口蓋の挙上,声帯の内転を改善させることを目的とした訓練。
1. 壁や机を押す,肩からこぶしを振り下ろす等のプッシング動作を練習。
2. 動作とともに強い発声をする。
3. ある程度,響く声が出るようになったら,徐々に動作を減らしていく。
プッシング動作のかわりに,椅子の底面や肘掛けを引っ張ったり,両手を前でつないで外方へ引っ張るというプリング動作でもよい。上肢の運動麻痺や認知障害の状態によって使いわける。また,声を出さずに強い息止めだけを行う方法もある。
8.ハッフィング
 気道内分泌物の移動を目的として、声門を開いたまま強制的に呼出を行うこと
 中程度の吸気の後、軽く口を開いて、ゆっくり長く「は-----っ」と 胸郭 と 腹筋 を使って息を絞り出す。その後、深く息を吸い込んだ後に、可能な限り早く短く 「ハッ、ハッ、八ッ」と 1-2回息を吐き出す
       日本摂食・嚥下リハビリテーション学会による訓練法のまとめ(改訂2010)より引用