◎高齢者の低栄養(低たんぱく質、低アルブミン血症)について
<高齢者が低栄養になるリスク>
1. からだや食事に関する要因
・ 加齢による視覚、嗅覚、味覚などの感覚機能の衰え
・ 咀嚼力や嚥下力の低下
・ 疾病によるもの (生活習慣病などの慢性疾患、後遺症など)
・ 栄養バランスの偏り
・ 活動量低下による食欲低下
・ 唾液、消化液の減少
・ 消化管運動の低下
・ 薬物の副作用
・ 医療者の間違った指導
2. 精神的な要因
・ ストレスや不安、うつによるもの
・ 認知機能低下
・ 誤嚥・窒息の恐怖
3. 環境的・経済的な要因
・ 一人暮らし、核家族化による孤食化
・ 貧困
・ 経済的、介護・介助のマンパワー不足
<高齢者の消化吸収の特徴>
✓ 加齢のみでは、膵外分泌能(タンパク質の消化酵素)は低下しない。
✓ 加齢のみでは、たんぱく質、糖質、脂肪の消化吸収障害はきたさない。
✓ 高齢者の低アルブミン血症の原因は、たんぱく質摂取量の低下と、食品として魚介類および植物性たんぱく質を比較的多く摂取し、消化吸収率の高い肉類の摂取量が低下。
✓ 高齢者では、たんぱく質の消化よりも吸収後の利用効率(筋肉への取り込み)が低下するのが大きな特徴。
<動物性たんぱく質と植物性たんぱく質のバランス>
*動物性たんぱく質の消化吸収率
動物性たんぱく質の吸収率の目安
| 食品 | 消化吸収率(目安) |
| 卵(特に全卵) | 約97〜98% |
| 牛肉・豚肉 | 約95%前後 |
| 鶏肉 | 約95%前後 |
| 魚 | 約90〜95% |
| 牛乳・乳製品 | 約95%前後 |
特に卵は「完全栄養に近い」たんぱく源として、非常に効率よく吸収されます。
*植物性たんぱく質との違い
植性たんぱく質の吸収率は70〜90%と動物性たんぱく質に比較してやや低めです。その理由は、食物繊維や抗栄養素(フィチン酸など)が吸収を妨げる、アミノ酸バランスがやや偏りやすいからと言われています。
*動物性たんぱく質の吸収率が高いメリット
- 筋肉の材料として効率よく使われる。
- 成長期・回復期に有利に働く。
- 少量でもしっかり栄養がとれる。
*注意点
- 脂質も一緒に多く摂りがち(特に赤身肉以外)で、メタボリック症候群に注意。
- 摂りすぎると腎臓に負担がかかることも注意が必要で、高齢者は腎機能が低下することも多く、は必ず主治医に相談してください。
- 植物性と組み合わせると、よりバランスが良くなる。
<高齢者のたんぱく質消化吸収の特徴>
① 消化機能はやや低下する。
- 胃酸・消化酵素の分泌が減る。
- 咀嚼力(かむ力)も低下しやすい。
そのため、消化に時間がかかる・分解がやや不十分になることがある。
② 吸収率自体は大きくは落ちない
- 腸での吸収能力は比較的保たれます。
- ただし、個人差が大きいです(腸の状態・病気・栄養状態)。
③ 利用効率の低下の可能性
- 筋肉でたんぱく質を使う力が低下(同化抵抗)。
- 少量のたんぱく質では筋肉合成が起こりにくい。
若い人よりも同じ量では筋肉がつきにくいとされています。
<高齢者に適したたんぱく質の摂り方>
① 1日の栄養必要量
たんぱく質 1.0〜1.2g/kg 男性50-60g/日 女性40-50g/日
エネルギー必要量 65-74歳 男性2350kcal/日 女性1850kcal/日
75歳以上 男性2250kcal/日 女性1750kcal/日
炭水化物 50-65% 脂質 20-30%
② 1回量をしっかり確保
- 1食あたり25〜30g 3食同じバランスで
- 欠食しない
- 食欲がない時は、軽食(おにぎり、サンドイッチ、栄養補助食品など)で補給
*少量をちょこちょこより「ある程度まとまった量」が大事で、高齢者では、三食均一に多く良質のたんぱく質を摂取することで改善されます。
③ 消化しやすい食品を選ぶ
おすすめ:
- 卵(非常に吸収良い)
- 魚(やわらかく消化しやすい)
- 鶏肉(特にむね・ささみなど脂肪の少ない部分)
- 乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)
工夫:
- やわらかく調理(煮る・蒸す)。
- 細かくしたり、のみこみやすくする。
- ゼリーや栄養ドリンクなどの補助食品も併用する。
④ ロイシン(筋肉の合成を助ける必須アミノ酸)を意識
ロイシンを多く含む食材:
- 乳製品(ヨーグルト、乳清など)
- 肉・卵
- 魚(アジ、マグロ、カツオ、鰹節など)
- 納豆、大豆、黄な粉など
*ロイシンを多く含んだサプリメントに「リハデイズ」「アミノバイタルアミノエール」などがあり、薬局にご相談ください。現在、医薬品としてはありませんのでご注意ください。
⑤ たんぱく質摂取のタイミング
たんぱく質…運動前90分くらいに摂取がおすすめ
アミノ酸…運動直後から60分以内に摂取がおすすめ
*すなわち、リハビリなどの予定があれば、その前に食事をしっかりとって食後の休憩をしておく。リハビリや運動前に十分にたんぱく質が取れていない場合は直後にサプリメントなどを摂取しておくことが大切です。
当院では、低タンパク質、低アルブミン状態の評価だけでなく、栄養代謝機能、消化吸収機能、腎機能、フレイル状態を正しく判定し、患者さんにあった「フレイル予防」をご提案しています。お気軽にご相談ください。
