多汗症の治療について(2026.03.15)

原発性多汗症とは…

 日常的にかく汗は体温調節をはじめとし、私たちの身体にとって重要な役割を担っています。しかし、気温や運動時などに関係なく、たくさん汗が出て日常生活に支障をきたす「原発性(原因となる疾患がない場合)多汗症」があります。多汗症は単なる「汗っかき」とは異なり、涼しい環境や緊張していない状況でも大量の汗が出る状態を指します。日本人の約5.8%が該当すると報告されており、手のひら、脇、足の裏、顔や頭部など特定部位に集中して発汗することが多いです。症状は日常生活や社会生活、精神面に大きな影響を与えることがあります。

ここでは、外用治療が可能な病態について説明します。

原発性手掌多汗症

 原発性手掌多汗症の患者さんは国内で約493.1万人いる(多汗症患者の約60%)と推計され、決して珍しくはありません。多くは10代頃(平均発症年齢13.8歳)に症状が現れはじめ、学校生活にも支障をきたしていることがあります。また、治療法があることの認知が広がっていないために、成人になっても手汗のために困っている方が大勢いると考えられます。

原発性腋窩多汗症

 明らかな原因がないにもかかわらず、日常生活で困るほど過剰に脇汗がでる病気です。およそ20人に1人がかかる、決して珍しくない病気です。脇汗がひどい症状として多くの患者さんが悩んでいます。この部位の多汗症は、衣服への汗染みが目立ちやすく、社会生活に大きな影響を与えます。腋窩多汗症の特徴として、アポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方から分泌される汗が混在することが挙げられ、アポクリン汗腺から分泌される汗は、皮膚常在菌によって分解されると特有のにおいを発生させるため、腋窩多汗症はワキガ(腋臭症)と併発することがあります。

診断:

多汗について思い当たる原因(病気、服用しているお薬など)がなく、6カ月以上続いている

さらに、下記の2項目以上当てはまる場合は「原発性多汗症」かもしれません。

1)最初に症状がでるのが25歳以下であること

2)左右対称性に発汗がみられること

3)睡眠中は発汗が止まっていること

4)1週間に1回以上多汗のエピソードがあること

5)家族歴がみられること

6)それらによって日常生活に支障をきたすこと

重症度判定

原発性局所多汗症の重症度は自覚症状により,以下の4つに分類したHyperhidrosis‌disease‌ severity‌scale(HDSS)を提唱しています。

1 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない。

2 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある。

3 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある。

4 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある。    

3,4を重症の指標とする。

外用方法:

◎外用抗コリン薬

原発性腋窩多汗症と原発性手掌多汗症において、保険適用の外用抗コリン薬による治療があります。

*次のような症状が現れた場合、使用をやめて当院に連絡をおねがいします。

・塗ったところに炎症やかゆみ、湿疹などの皮膚の異常がみられる

・口が渇く

・何日も便秘が続き、お腹が張って苦しく感じる

・尿が出にくい、出ないなど

①エクロックゲル®(ソフプロニウム)5% 1日1回 HDSS3度以上( 腋窩)

    エクロックゲル 科研製薬HPより引用

②ラピフォート®ワイプ(グリコピロニウム)2.5% 1日1回 HDSS3度以上 (腋窩)

   ラピフォートワイプ マルホHPより引用

③アポハイドローション(オキシブチニン) 1日1回就寝前 HDSS3度以上 (手掌)

   アポハイドローション HISAMITSU HPより引用

*A型ボツリヌス菌毒素製剤(ボトックス®)の局注療法(注射)

当院では対応していませんので、ご注意ください。

掌蹠多汗症

 掌蹠多汗症の患者にA型ボツリヌス毒素(BT-A)の局所投与は発汗量を減少させ有効であるが、投与量や有効期間にばらつきがあり、重症度に合わせて投与量を考慮する必要があります。ただし、本邦では現在保険診療として認められていません。

腋窩多汗症

 腋窩多汗症の患者にA型ボツリヌス毒素(BT-A)の局所投与は海外を含め本邦でも大規模な比較試験が行われており、その有用性が示されています。2012年11月から重症型に対して保険診療の適用が認められています。

*他に、神経ブロックや手術がありますが、必要な場合は専門病院をご紹介いたします。

内服薬:比較的作用が強いので併用薬など注意が必要です。

 プロ・バンサイン(プロバンテリン) 1回15mg 1日3-4回内服

 カタプレス(クロニジン) 1回75-300µg 1日3回

 グランダキシン(トフィソパム) 1回50mg 1日3回

漢方薬:

女性

  五苓散:むくみがちの女性で上半身に強い場合

  防己黄耆湯:水太り体質で浮腫傾向がある女性で下半身に強い場合

  加味逍遙散:多愁訴で発作性の熱感、ほてりなどがある女性の場合

興奮・ストレス

  四逆散:主に神経の興奮による手汗の場合

  桂枝加黄耆湯:上半身に汗をかきやすい方の発汗を改善

  越婢加朮湯:男性で熱がこもり、あせもを伴う場合

  柴胡加竜骨牡蛎湯:興奮しやすい、怒りっぽく神経過敏の場合

  白虎加人参湯:熱がこもり滝のように汗が出る方に効果

  柴陥湯:ストレスによる多汗症

虚弱体質の方

  補中益気湯:疲れやすく汗がダラダラと出てしまう場合

             気軽にご相談ください。