牛乳アレルギーのお子様へ
①牛乳アレルギーの特徴と注意点
ペプチドミルクとは、ミルクアレルギー予防のために開発された新生児用のミルクのことで、アイクレオの「ペプチドミルク」、森永の「E赤ちゃん」などがペプチドミルクにあたります。育児用粉ミルクは一般的に牛乳からつくられており、ママの体でつくられる母乳とはたんぱく質の成分が異なります。生まれたばかりの赤ちゃんの体は未成熟なので、大きなたんぱく質をうまく分解することができず、体が異物として認識してしまうことで、アレルギーの原因となるアレルゲンになってしまうことがあります。これを防ぐために作られたのがペプチドミルクで、一般的な育児用ミルクに含まれる大きなたんぱく質を小さく分解した「ペプチド」にかえることで、赤ちゃんの体に吸収されても抗体になりにくいという性質があります。ただし、たんぱく質の酵素分解が不十分でアレルゲンが残存しており、牛乳アレルギー児には使用できません。
・ 牛以外の動物の乳(ヤギ乳、めん羊乳)は表示対象外ですが、牛乳と交差反応*1を起こすことが多いので、注意が必要です。
*1 交差反応:原因食物(花粉)のたんぱく質(アレルゲン)と構造が似たたんぱく質をもつ食物に対して、アレルギー反応をおこすこと。
②食べられないもの
- 牛乳
- 乳製品(ヨーグルト、チーズ、バター、生クリーム、はっ酵乳、れん乳、粉ミルク、アイスクリーム)
・乳製品を含む加工食品(一例)パン、パン粉、洋菓子、チョコレート、ルウなど
・乳を示す食品表記(表示) 例 ホエイ、カゼイン、脱脂粉乳
③除去する必要のないもの
- 乳糖…牛乳が原料であっても、残存するたんぱく質はごく微量と考えられるため、原則除去は必要ない。
- 牛肉…抗原が異なるため、除去は必要ないが、サイコロステーキなどの加工肉の結着材として牛乳由来のカゼインナトリウムが使用されていることがあり注意が必要。
④紛らわしい表示例
・「乳」という文字があっても、乳成分ではないもの
乳化剤…卵黄、大豆、牛脂などから作られているが、一部に牛乳成分も含むものもあり注意。
乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム
- 「バター」という文字を使用していても乳製品ではないもの
カカオバター
・牛乳成分を含む医薬品(リカルデント®など)がありますので、病院で薬の処方を受ける時やドラッグストアなどで家庭薬の購入時などには、医師や薬剤師に確認しましょう。
・石鹸やスキンケアクリーム、入浴剤などにも乳たんぱくを含有するものがあり、接触に注意。
⑤牛乳の主な栄養素と代替栄養
アレルギー用ミルク(特別用途食品・ミルクアレルゲン除去食品)は、牛乳たんぱく質を酵素分解して、分子量を小さくした「加水分解乳」と、アミノ酸を混合してミルクの組成に近づけた「アミノ酸乳」、大豆たんぱくを用いた調製粉末大豆乳がある。加水分解乳は、最大分子量の小さいものほどアレルゲンの酵素分解が進んでおり、症状が出にくい。アミノ酸乳は、脂質が少なく、通常の調乳条件では高浸透圧のため下痢を来しやすい。アレルギー用ミルクの選択は医師の指示に従う。


・牛乳・乳製品をとらないことで、カルシウムが不足しやすくなります。小魚など他食品でカルシウムを積極的に補う必要がある。
牛乳100mLあたりカルシウム100mg

⑥乳製品と食べられる範囲について
牛乳アレルギーの原因となるたんぱく質は、乳製品によって含まれる量が異なります。例えば、同じ乳製品であっても、チーズには豊富に含まれますが、バターは脂質が多く、たんぱく質が少なくなっています。栄養摂取の面からも、専門医に相談しながら、「食べられる範囲」(食品の種類や量)を把握することが大切です。
必要最低限の除去」の指導例:
少量負荷:牛乳1-3mL
バター2-6gやスライスハム1/4-1/2枚からはじめましょう。
中等量負荷:牛乳10-50mL
牛乳50mL相当
有塩バター 270g
ホイップクリーム 90g
ヨーグルト(全脂無燈) 45g
プロセスチーズ 7g パルメザンチーズ 3g
脱脂粉乳 4g 練乳 20g
日常摂取量:牛乳100-200mL
治療のゴールは日常量を摂取しても症状が発現せず、除去不要になることです。

注意事項:
・バター少量でも症状が出るなど、少量の摂取で強いアレルギー反応が出る場合は自己判断で無理に摂取を続けず、専門医の指導のもとで治療をしていき
ましょう。
・体調不良時には摂取は行わず、原因食物摂取により発疹などの症状が出現したら、1~2日あけて摂取を再開するのが目安です。
・症状が強く出た場合にはあらかじめ処方された抗アレルギー薬を内服させて担当医師に相談することをおすすめします。
食物アレルギーの栄養指導の手引き2017準拠 新版食物アレルギーの指導法 医歯薬出版より引用
※症状の有無には個人差がありますので、除去や摂取、食べられる範囲の確認に関しては、自己判断せず、必ず専門医に相談しながら行ってください!
