授乳について(乳児期前半の栄養)

乳児期の哺乳量:

 0~5か月 0.78L/日

 6~11か月 0.53L/日 (6~8か月 0.60L/日 9~11カ月 0.45L/日)

   日本人の食事摂取基準2025年版より引用

月齢基準となる体重1回あたり 母乳量(mL)回数授乳間隔
(kg)授乳回数(回)離乳食(回)
生後-1週間3808-12 2-3時間
2週間-1か月3.880-1208 3-時間
1-2か月4.8120-1606-8 3-4時間
2-3か月5.8120-1606-7 3-4時間
3-5カ月6.82006-7 3-4時間
5-7カ月7.7200離乳食後1回+4-5回+14-5時間
7-9カ月8.3200離乳食後2回 +3回+25-6時間
9-12カ月8.8200離乳食後3回 +2回+35-6時間

栄養摂取基準:

①エネルギー

推定エネルギー必要量(kcal/日)=総エネルギー消費量+エネルギー蓄積量

0~5か月:男児550kcal 女児500kcal

6~8か月:男児650kcal 女児600kcal

9~11か月:男児700kcal 女児650kcal

②たんぱく質 0~5カ月:10g/日 6~8か月:15g/日 9~11カ月:25g/日

③脂質 0~5カ月:50g/日 6~11カ月:40g/日

*体重増加の目安

月齢1日あたりの体重増加目安週あたり/月あたり
生後0~1ヶ月25~50g175~210g/週
生後2~3ヶ月25~40g140~210g/週
生後4ヶ月以降15~30g600~900g/月

*母乳と人工乳、牛乳の栄養成分比較(100g)

栄養素名人乳一般育児用 ミルクフォロー アップミルク牛乳
エネルギー65kcal67kcal62.5kcal67kcal
たんぱく質1.1g1.4g1.5g3.3g
脂質3.5g3.6g2.86g3.8g
炭水化物(糖質)7.2g7.3g7.76g4.8g
水分0.2g  87.4g
力リウム48mg65mg101mg150mg
力ルシウム27mg45.5mg93.6mg110mg
リン14mg26mg46.8mg93mg
マグネシウム3mg4.8mg6.5mg10mg
0.04mg0.81mg0.81mg0.02mg
ビタミンA(レチノール当量)46μg58.5μg50.7μg38μg
ビタミンK1μg3.4μg3.25μg2μg
ビタミンB10.01mg0.05mg0.09mg0.04mg
ビタミンB20.03mg0.10mg0.10mg0.15mg
ビタミンB12微量0.20µg0.16µg0.3μg
ビタミンC0.50mg7.8mg6.5mg1.0mg
ビタミンD0.33µg1.2µg0.68µg0.3µg

日本食品標準成分表2015年版より改変

 特に、母乳栄養児におけるビタミンD不足、胎盤通過の困難なビタミンK不足が問題となるため、ビタミンKの追加投与や、日光照射、離乳食での積極補充が重要である。さらに、乳児後期の離乳期に鉄欠乏から貧血が発生することがあり、離乳食に鉄の供給源となる食品を積極的に摂取する必要がある。

<乳児の消化吸収>

胃の容量:

新生児  30~60ml

生後1か月  90~150ml

6~12か月  120~200ml

5歳  700~830ml

胃の発達: 噴門部(胃の入り口)の食道括約筋が未発達(嘔吐しやすい)

腸の発達: 出生時身長比約7倍(大人身長比4-5倍)

動きは成人の半分以下

出生後に消化酵素の分泌等の機能が始まる

体液生理:

新生児、乳児、成人、高齢者の体液分布(体重の%で表した) 看護ルーより引用

成人と比較して体水分量が多い。

栄養の貯蔵が少なく、脱水・飢餓に弱い。

体重あたりの体表面積が多く皮膚からの不感蒸泄が多く、脱水に注意。

新生児の腎機能は比較的未熟である。

<授乳期の栄養>

母乳栄養の特徴

赤ちゃんの利点:

・ 乳児に消化吸収されやすい最適な栄養

・ 感染防御因子(分泌型IgA・ラクトフェリン・リゾチーム・補体)などを含み、免疫の向上が期待できる。

・ 顔全体の筋肉やあごの発達を促す。

・ 母親への愛着信頼。

・ 衛生的。

・ 母乳のアレルゲンは母親の免疫系が働くので抗原性が少ない。

母親の利点:

・ 産後の母体回復(子宮収縮ホルモン分泌、妊娠前の体重への回復、排卵の抑制)

・ 母性ホルモン分泌

・ 経済的、衛生的

②母乳栄養とは

初乳(分娩後3~4日)

分泌型免疫グロブリン(IgA)、ラクトフェリンが多い。

βカロチンを含むため黄色がかっている。

消化の良いタンパク質が多い。

成熟乳(10日以降)

必要な栄養素が赤ちゃんにとって最適な状態で含まれている。

成分:

たんぱく質:消化がよく、母親の栄養状態の影響を受けにくい。

カゼイン、免疫グロブリン乳清たんぱく質(ホエイプロテイン)など

脂質:母乳エネルギーの50%を占める。リパーゼが含まれていて効率よく消化される。

リノール酸、αリノレン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、コレストロールなど

炭水化物:糖質80%が乳糖、他にはオリゴ糖が含まれている。

乳糖、オリゴ糖

ビタミン:脂溶性ビタミン、水溶性ビタミン等初乳中に多い。

ビタミンAビタミンEなど

ミネラル:母乳中のミネラルは一定でマグネシウム以外は初乳で高い。

③人工栄養

• 母乳不足、母乳栄養継続困難や代謝性疾患の場合に必要。

• 人工乳は研究が重ねられ改良されており、成分は母乳に近いものとなってきています。

• 感染防御因子は十分でない場合があり、注意が必要。温度や保存、感染管理に十分注意する。

• 母乳に比べ消化・吸収率はやや低い。

• 液体ミルクが発売されている(育児用ミルク、低出生体重児用、フォローアップミルク)

・乳糖不耐症用、ミルクアレルギー、先天性代謝異常症用もある。

*母乳の飲みすぎのサイン

・ 吐き戻しが多い。

 *授乳のたびに吐く。徐々に吐く量が増える。

 * 少量の吐き戻しはよくあることですが、「毎回多い・苦しそう」なら飲みすぎや他の原因も考えます。

・ お腹が張って苦しそう。

 * お腹がパンパンに張っている。足をバタバタさせて不機嫌。ガスが多いなど

・ うんちがゆるすぎ・回数が多すぎる

 * オムツかぶれが気になる。逆に便秘で機嫌が悪いなど。

・ 授乳後に泣いたり、うなったりと機嫌が悪い。

 * 授乳しても泣き止まない、反りかえって泣く。授乳後のお昼寝が短いなど。

・体重増加が著しい。

以上のような症状が見られた場合は、母乳の飲みすぎの可能性があるため、赤ちゃんの様子を見ながら授乳回数や授乳時間を調整してみてください。

*赤ちゃんの吐き戻し

生まれたばかりの赤ちゃんは口に触れたものを吸いつくといった無意識「吸てつ反射」があり、生後半年ぐらいまでの吸いつくしぐさや指しゃぶりのようなしぐさは、空腹であることとは無関係とされています。この「吸てつ反射」によって、赤ちゃんはおっぱいがそばに来たら、満腹であっても本能的に吸いつき母乳を飲みます。さらに、まだ、満腹中枢が未発達なため、満腹状態でも飲み続けることがあります。また、赤ちゃんの胃は大人の胃と異なって真っすぐな状態であることと、入り口の筋肉が未熟なため、吐き戻ししやすいとされています。

これらの要因が重なることで、赤ちゃんは簡単に吐き戻しを起こします。飲みすぎると、噴水のように吐き出す赤ちゃんもいて、赤ちゃんと吐き戻しは頻繁に起こることなので、慌てることはありません。成長とともに自然に減ることがほとんどです。

授乳中の工夫

飲ませる姿勢を少し起こす。

赤ちゃんの頭が体より少し高い位置になるように

真っ平らより、やや斜めがおすすめ

こまめにゲップをさせる。

片方のおっぱいごとに一度ゲップ

飲み終わったあともしっかり

飲みすぎを防ぐペース調整

勢いよく飲みすぎる場合は途中で一旦休憩

母乳の出が良すぎるときは少し搾ってから授乳

授乳後のケア

すぐ寝かせない(10〜20分は縦抱き)

抱っこで落ち着かせる

そのまま寝かせると逆流しやすい

お腹を圧迫しない.

おむつ・服をきつくしすぎない

授乳直後に激しく動かさない

⑥ その他

頻回に少量ずつ飲ませる(ドカ飲み防止)

うつ伏せ寝はNG(安全面のため仰向け)

よだれかけやガーゼでこまめにケア

*母乳が足りているサイン

・ おしっこがしっかり出ている。

  1日 6回以上しっかり濡れている。透明〜薄い黄色ならOK

・ 1日に7~8回は飲んでいる。

・ ゴクゴクと飲んでいる音がする。

・ 体重が増えている。

授乳後の機嫌が良い。

・ 顔色が良い。

・ 肌に弾力がある。

・ 排便がだいたい3~7回/日ある。

*母乳が足りないサイン

・ 授乳後にぐずったりして機嫌が悪い。眠ってばかりいる。元気がない。

・ 哺乳力が弱い。いつまでもおっぱいに吸いついている。おっぱいから離れない。常におっぱいを探す。

・ 指しゃぶりをずっとしている。

・ 授乳ペースが3時間空かない。

・ 排尿、排便の回数が少ない。尿の色が濃い。

・ 便が硬くて出にくい。

授乳の疑問解消ガイド厚生労働省

混合栄養

母親が何らかの理由で母乳を十分に与られない場合に、母乳と育児用ミルクを合わせて与えることをいう。混合栄養を取り入れる要因としては、母乳分泌不足、母親の健康上の要因、疲労、母親の仕事等があげられる。栄養方法のいかんに関わらず、授乳を通した健やかな親子関係づくりが進むように支援を行う。

・母乳を少しでも与えているなら、母乳育児を続ける為に育児用ミルクを有効に利用するという考え方に基づき支援を行い、母乳の出方や量は異なるため、混合栄養の取り入れ方については、母親の思いを傾聴すると共に、母親の母乳分 泌のリズムや子どもの授乳量等に合わせた支援を行う。

・授乳を通して、母子・親子のスキンシップが図られるよう、しっかり抱いて、優しく声かけを行う等暖かいふれあいを重視した支援を行う。

・子どもが欲しがるサインや、授乳時の抱き方、乳頭(哺乳瓶の乳首)の含ませ方等について伝え、適切に授乳できるよう支援する。

・育児用ミルクの使用方法や飲み残しの取扱等について、安全に使用できるよう支援する。

最後に、赤ちゃんによって個人差があります。授乳、栄養に関する相談は当院までおねがいします。