小児の栄養指標

小児の栄養指標

1)Waterlow分類

W/H(体重/身長)とH/A(身長/年齢)を用いて小児の栄養状態を評価し、短期的・慢性的な栄養障害を判定する方法です。

Waterlow分類の概要

Waterlow分類は1972年に提唱され、小児の栄養状態を短期間の低栄養状態(wasting)慢性的な低栄養状態(stunting)に分けて評価します。具体的には以下の指標を用います:

  • W/H(Weight for Height):同身長の標準体重に対する実測体重の比率。90%未満で「やせ(wasting)」と判定され、比較的短期間の栄養不足を反映します。 
  • H/A(Height for Age):同年齢の標準身長に対する実測身長の比率。95%未満で「成長発育阻止性の栄養障害(stunting)」と判定され、過去の慢性的な低栄養状態を示します。

判定基準と栄養障害の分類

Waterlow分類では、W/HとH/Aの組み合わせにより栄養状態を以下のように分類します:

            W/H(体重/身長)          H/A(身長/年)      

   高度障害      < 70%               < 85%      

   中等度障害   70% ≦ < 80%         85% ≦ < 90%    

   軽度障害    80% ≦ < 90%         90% ≦ < 95%    

   正常      90% ≦ < 110%           95% ≦      

   過体重      110% ≦                         

*W/Hはwasting(消耗性の栄養障害)を示し、比較的短期間の低栄養状態を反映する

H/Astunting(成長発育阻止性の栄養障害)を示す

小児期の栄養アセスメント 静脈経腸栄養 Vol.27 No.3 2012より引用

2)カウプ指数、ローレル指数

小児の栄養状態、体格の評価には、カウプ指数(Kaup Index)・ローレル指数(Rohrer Index)が広く用いられています。

*カウプ指数は、体重増加が著しい生後3か月以内を除く乳幼児が対象となる。カウプ指数はBody Mass Indexと同様の計算式を用い、幼児期後半より学童には、ローレル指数を用います。

*カウプ指数(乳幼児)

カウプ指数=体重(g)÷身長2(cm)×10

(例) 体重 :10kg/身長:80cmの場合

10,000÷802×10
=10,000÷6,400×10
=15.625
=16

カウプ指数とは、厚生労働省が赤ちゃんの栄養状態や子どもの発育、体格の状態を見るために使っている指標のひとつで、母子手帳にも書かれています。体格にかかわる指標は、BMIが比較的有名ですが、カウプ指数は乳幼児のために定義されたもので、子どもが肥満なのか痩せ型なのかという目安になります。

乳幼児の発育評価

*ローレル指数(学童期6歳以降)

ローレル指数=体重(kg)÷身長3(m)×10

(例) 体重 :20kg/身長:120cmの場合

20÷1.23×10
=20÷1.728×10
=115.7407
=116

 ローレル指数は、学童期(6歳~12歳)の子ども肥満を計測する際に用います。ローレル指数130が標準の体重となるように設定されています。

幼児期後半~学童の発育評価

・やせすぎ:110未満
・やややせ:110~120
・ふつう:120~140未満
・やや太りすぎ:140~160
・太りすぎ:160以上

3)乳幼児身体発育曲線(母子健康手帳)

 乳幼児⾝体発育曲線の活⽤・実践ガイドより引用 令和2年度 厚⽣労働⾏政推進調査事業費補助⾦ 成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(健やか次世代育成総合研究事業)

*発育曲線の意義とその⾒⽅

(1)個々の発育曲線

発育曲線とは、ある⼦どもの⾝⻑や体重の変化を経時的に図⽰したものです。下図のように横軸に⽉齢・年齢をとり、縦軸に⾝⻑・体重をとります(下図は体重を例にしました)。成⻑曲線もしくは⾝体発育曲線とも⾔います。⾝体計測値(⾝⻑、体重)をグラフに点で書き⼊れ、それを線でつなぎます。1回ごとの⾝体計測で得られたデータを経時的につないで⾒るということになります。ただし、これだけでは⽐較対象がありませんので、その⼦どもの成⻑の傾向や問題があまり明らかになりません。そこで、発育曲線の基準図が作られています。

(2)平均値とパーセンタイル

個々の⼦どもの発育曲線を⽐較する対象として、⾝⻑や体重の平均値を表した(つないだ)グラフがあります(下図)。ただし、この図との⽐較になると、「平均値より上にある」か、「平均値より下にある」かのように、⼤まかな⽐較検討しかできませんので、もう少し詳細な発育曲線基準図が作られています。パーセンタイルを⽤いたグラフになります。パーセンタイルとはデータを⼩さい⽅から順に並べ、全体を100として⼩さいほうからの何番⽬に位置するかを表すものです。例えば25パー センタイルは⼩さいほうから4分の1に位置し、50パーセンタイルはちょうど真ん中を表します。

(3)パーセンタイルによる発育曲線基準図

パーセンタイル値は、どの程度の割合の⼦どもがその線の付近までに⼊ることが予想されるかを意味します。パーセンタイル値を⽤いた発育曲線基準図(2010年)は次⾴の図になります。個々の⼦どもの成⻑の様⼦を書き⼊れることができ、そこから成⻑の度合いを読み取ることができます。⾝⻑と体重を⼀つのグラフで表しているものになりますので、縦軸が2種類の単位(cm、kg)になっています。わが国の乳幼児の発育曲線基準図は、これまで10年に1度、1万⼈前後の乳幼児の⾝体計測(⾝⻑・体重)を⾏い(乳幼児⾝体発育調査)、それらのデータをなめらかな曲線で表し作成されています。なお、2020年に予定されていた乳幼児⾝体発育調査が新型コロナウイルス感染症の影響により延期となっていますので、直近の2010年データを⽤いています。また、2000年データを標準値とする議論もありますが、ここでは直近のデータを⽤いることとしました。発育曲線の基準図には、何本(7本)ものなめらかな曲線が描かれています。曲線の右端を⾒ると、下から「3」「10」「25」「50」「75」「90」「97」となっていますが、これらはパーセンタイル値の曲線を表しています。各パーセンタイル値の曲線を基準線と⾔います。また、隣接する基準線と基準線のあいだのことを「チャネル」もしくは「チャンネル」と⾔います(本書ではチャンネルと呼びます)。ある1本の基準線を越えて別のチャンネルに移動することを「チャンネルを横切る」等の表現で表します。個々の⼦どもの計測値を書き⼊れていくと、その⼦どもの成⻑度合いを可視化することができます。成⻑に⼤きな変動がある場合、あるいは変動がまったくない場合、あるパーセンタイル値付近から別のパーセンタイル値付近に変化することが観察できます。

(4)パーセンタイルとSDスコア

⼦どもの発育は、パーセンタイルをはじめ、様々な統計指標で表されています。SDスコアは特に⾝⻑の状況を⾒るために⽤いられます。パーセンタイルは⼩さい⽅から何パーセント⽬にあたるかの順位を表すものであり、SDスコアは偏差値のような指標で0が平均です。また、パーセンタイルは感覚的にわかりやすく、SDスコアは極端な低⾝⻑を表現しやすいなどの特徴があります。⾝⻑のように正規分布(図のように左右対称の⼭)すると考えられる場合には、パーセンタイルとSDスコアの関係を下記のように図⽰することができます。下図は⾝⻑を例にしています。左端のパーセンタイルの「3」が、SDスコアの「−2」に近いところにあるのがわかります。⾝⻑は正規分布すると仮定して、左右対称のグラフとなっていますので、右端のパーセンタイルの「97」が、SDスコアの「+2」に近いところにあるのも確認できます。下図において、他のパーセンタイル曲線の値、たとえば「10」「50」「90」についても確認できます。

(5)発育をみる際の留意点

⼦どもの発育は、周りの⼤⼈、とくに保護者(養育者)にとっては気になるものです。⾝体計測のたびに⼀喜⼀憂することも多いでしょう。発育曲線をはじめとした客観的な発育の⾒⽅は、⼦どもの将来を⾒据え育児を楽しむ視点を提供することにつながります。発育曲線を描いてみると、⼦どもの発育パターンは様々であることがわかります。基準線に沿っていくパターンはもとより、当初のチャンネルを早くから上回ったり、あるいはやがてチャンネルを上に横切ったりと何種類もあることがわかりますが、ある時点だけではこれらの傾向は⾒えてきません。経時的に観察・記録することにより、経過観察や医療機関受診勧奨などのより客観的なアドバイスが可能になります。