卵アレルギーのお子様へ

卵アレルギーのお子様へ

卵アレルギーの原因たんぱく質の特徴

<たんぱく質の種類と加熱>

 卵によるアレルギーは主に「卵白」に含まれるたんぱく質によるものがほとんどで、卵アレルギーの原因たんぱく質の特徴「卵黄」ではおきません*1。 

 卵アレルギーを引き起こすたんぱく質には2種類あり、「オボムコイド」は加熱による影響を受けにくいですが、「卵白アルブミン(オボアルブミン)」は加熱の影響を受けてアレルギーをおこす力が低下することが分かっています。「卵白アルブミン」は卵白のタンパク質の54%で、「オボムコイド」11%の5倍量あります。

 *1 「卵黄」のみでアレルギーが出た場合は、ごく少量の「卵白」が混入した場合が考えられ、重症の疑いがあります。また、「卵黄」成分自体に反応して嘔吐や下痢を起こす特殊な「消化管アレルギー」として即時型でなく、食後3-4時間で起こす場合もあり要注意です。

 全卵50gの抗原量(残存率)
卵白アルブミンオボムコイド
生卵10520mg8495mg
温泉卵9580mg(91.1%)1220mg(14.4%)
炒り卵980mg( 9.3%)1280mg(15.1%)
錦糸卵84mg( 0.8%)1232mg(14.5%)
ゆで卵12分固ゆで卵1.2mg( 0.01%)1000mg(11.8%)
20分固ゆで卵0.55mg( 0.005%)520mg( 6.1%)

 12分間加熱では、卵白アルブミンは生卵の10000分の1になるのに対して、オボムコイドは8分の1しか低下しません。20分間加熱では、卵白アルブミンは20000分の1、オボムコイドは16分の1です。このように、卵をしっかり加熱すればアレルギーはでないのに、加熱が少し甘いと症状がでるお子さんは、卵白アルブミンが抗原としてより反応していると考えられます。ちなみに、おそらく卵アレルギーの3分の1のお子さんがより「卵白アルブミン」に反応しているとされ、3分の2が「卵白アルブミンとオボムコイドの両方」またはより「オボムコイド」に反応しているといわれています。加熱時間がアレルギー反応に影響をおよぼす場合は、「オボムコイド」によるアレルギー対策が必要になります。

 また、ゆで卵を作った後に卵黄と卵白を一緒にしておくと、卵白のオボムコイドが卵黄に浸透していくことも確認されています。ゆで卵作成直後に分離すれば卵黄1個で卵白0.01g、1時間後で35倍(0.5g)、24時間後で250倍(3-4g)とされています。ちなみに生分けの場合は、卵黄への卵白の混入は1gくらいです。ですので、より卵白の混入を防ぐにはゆで卵作成直後に分離するか、生分け時に卵白1gを念頭に置いて対応してください。

 <調理法>

水や油の熱伝導効率により、抗原性は以下のように低下します。

 「焼く」 例)オーブンで180度20分間 >「蒸す」 例)蒸し器で13分間 >「揚げる」例)180度3.5分

  • 炒り卵 10分の1   錦糸卵 100分の1  ゆで卵 10000分の1
  • 茶わん蒸し、プリン:80℃前後で加熱される低温加熱食品のため、水分も多く抗原性が低下しにくい。
  • かき卵スープ、うどん、ぞうすい:卵白は水で希釈すると凝固しにくくなり、水分が多いため100度以上に加熱できないため、凝固しにくい。
  • マヨネーズ:低加熱とされるが、加熱卵2分の1個以上食べられれば、通常量(小さじ1杯程度5g)のマヨネーズは大丈夫です。
  • 電子レンジ:電子レンジ500W 4分間では、卵白アルブミンは生卵の数十分の1しか低下しないので、加熱は別の方法が必要。

 <副材料>

  小麦:オボムコイドは、小麦粉が混ざると固く結合して溶けにくくなり、抗原性は大きく低下する。

    卵白アルブミン:ゆで卵 12mg         卵ボーロ1g(1-2個) 52mg↑↑

         オボムコイド :    1000mg                                  3mg

たまごアレルギーの必要最低限の除去から除去解除

必要最低限の除去」の指導例:

少量負荷:加熱卵白1-1.5g 

中等量負荷:加熱卵白4-18g 

日常摂取量:加熱卵白25-35g

*3ハムなどは加熱

 まずは、クッキーやビスケットは半分から始め、様子をみて1枚、2枚と増やしていきます。クッキーやビスケット2枚が摂取できるようになれば、卵白5g相当まで摂取可能と考えて、図の卵白5gの料理へと挑戦しましょう。それ以降も症状を確認しながらすこしずつ摂取卵白量を増やしていきます。1~2週間で卵1個(50g)の10~20%(5~10g)ずつ増量させていくのが目安です。

治療のゴールは卵1つを摂取しても症状が発現せず、除去不要になることです。

  注意事項:

・クッキー1/2枚でも症状が出るなど、少量の摂取で強いアレルギー反応が出る場合は自己判断で無理に摂取を続けず、専門医の指導のもとで治療をしていきましょう。

・体調不良時には摂取は行わず、原因食物摂取により発疹などの症状が出現したら、1~2日あけて摂取を再開するのが目安です。

・症状が強く出た場合にはあらかじめ処方された抗アレルギー薬を内服させて担当医師に相談することをおすすめします。                    

食物アレルギーの栄養指導の手引き2017準拠 新版食物アレルギーの指導法  医歯薬出版より引用

*たまこな(鶏卵粉末)

「たまこな25」は、卵たんぱくを25mg(ケルダール法)含みます。これは15分ゆでたゆで卵(全卵)約0.2g、かたゆで卵白0.13gに相当します(微量負荷)。弱い甘み
「たまこな250」は、卵たんぱくを250mg(ケルダール法)含みます。これは15分ゆでたゆで卵(全卵)約2g、かたゆで卵白1.3g、全卵32分の1~25分の1個に相当します(少量負荷)。ミックスフルーツ味
「たまこな750」は、卵たんぱくを750mg(ケルダール法)含みます。これは15分ゆでたゆで卵(全卵)約6g、かたゆで卵白4g、全卵8分の1個に相当します(中等量負荷)。ミックスフルーツ味

栄養面での工夫

 卵はたんぱく質を多く含む食品です。そのため卵を除去している場合にはたんぱく質が不足することがあります。たんぱく質は肉や魚、大豆製品や牛乳にも含まれているためそれらを活用すれば卵を除去していても心配する必要はありません。

*鶏卵M玉1個(40-50g)あたり

たんぱく質約6.0g      →  肉(豚、牛肉の赤身) 25-35g

                                 鶏肉(ささみ)     25g

             魚           25-35g

                                 豆腐(木綿)      85g

食品の選定と代替食品の利用

たまごはパンや菓子類、ハム類、調味料、練り物(肉団子、ハンバーグ)のつなぎや衣などにも入っています。

食品を選択する場合は容器包装に記載されている原材料表示を必ず確認するようにしましょう。

思わぬ食品にアレルゲンが含まれている場合もあるため、確認する習慣をつけておくことが大切です。

近年、食品アレルギーに配慮された食品を取り扱う食品メーカーが増えており、主要アレルゲンである卵・小麦・牛乳を原材料に含まない食品も多数あります。そういった食品を利用しながら無理なく行っていきましょう。

そのほかの知識

・ラムネなどに含まれる卵殻カルシウムは卵白とは無関係のため摂取可能です。

・レシチンは乳化剤に使用される物質です。レシチン(卵由来)と記載のあるものは除去の対象になるため注意しましょう。

・インフルエンザに含まれる卵白たんぱく質はたまごボーロ1粒以下のため、原則としてインフルエンザ予防接種は可能です。しかしたまごを食べたことのないお子様には接種をすすめないこともありますので医師に確認してください。

・風邪薬のなかには卵白成分が入っているものもあるため、医師には必ず卵アレルギーであるということを伝え、相談しましょう。

より詳しい治療はアレルギー専門医の指導のもと安全に行っていきましょう。

乳幼児期のアレルギーは、成長とともに改善するものがほとんどです。

子供の成長を見ながら気長につきあっていきましょう!いつでも相談してください。

参考:

食物アレルギーの栄養指導の手引き2017準拠 新版食物アレルギーの指導法  医歯薬出版

厚生労働科学研究班による食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022 

厚生労働科学研究班による食物経口負荷試験の手引き2023

厚生労働科学研究班による食物アレルギーの診療の手引き2023

食物アレルギー 患者指導の実際、 伊藤節子 アレルギー58