アトピー性皮膚炎の外用薬治療
1)ステロイド外用薬
ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎治療の基本となる薬剤であり、代表的な炎症を抑える軟膏です。それぞれの皮疹の重症度に応じて適切な強さ(ランク)のステロイド薬を選択し、さらに病変の性状、部位により剤型を使い分け、十分に炎症を抑制するように使用します。

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024 日本皮膚科学会より引用

モイゼルト軟膏.jp 大塚製薬

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024 日本皮膚科学会より引用
全身性副作用
ステロイド外用薬の全身性副作用はステロイドのランク、塗布量、塗布期間などに依存し、ランクの高いステロイド外用薬を、大量に長期使用すると起こりやすくなります。紅皮症(皮膚が赤くただれている)など皮膚バリアの低下した状態では経皮吸収が高いため起こりやすくなるので注意が必要です。また、小児は経皮吸収が高いことや体重に比して体表面積の占める割合が大きいので、全身性副作用を起こしやすい。ステロイド外用薬の全身性副作用としては、視床下部―下垂体―副腎系ホルモンの抑制、高血圧、高脂血症、糖尿病、満月様顔貌、クッシング症候群などがあります。
局所副作用
毛細血管拡張、皮膚萎縮、皮膚線条、紫斑、酒さ様皮膚炎・口囲皮膚炎、多毛、色素脱失、創傷治癒遅延、接触皮膚炎、ざ瘡(にきび)・毛包炎、伝染性軟属腫(みずいぼ)、体部白癬、疥癬など細菌、真菌、ウイルスによる皮膚感染症などがあります。一般に局所副作用はステロイドのランク、塗布期間、塗布部位、年齢に影響され、高いランクのステロイドを使用した場合や、長期に使用した場合、顔面や陰部などの吸収率の高い部分に使用した際、高齢者に使用した際に起こりやすいとされています。また基剤にも影響され、軟膏よりクリームの方が経皮吸収が高いです。
*プロアクティブ療法
プロアクティブ(proactive)療法は、再燃を繰り返す皮疹に対して、急性期の治療によって治療し改善した後に、保湿外用薬によるスキンケアに加え、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬を間歇的に(週2回など)塗布し、改善状態を維持する治療法です。アトピー性皮膚炎では、炎症が軽快して一見正常に見える皮膚も、組織学的には炎症細胞が残存し、外的あるいは内的な要因により再び炎症を引き起こしやすい状態にあることが多いです。この潜在的な炎症が残っている期間は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬によるプロアクティブ療法を行うことによって、炎症の再燃を予防できることが多いです。すなわち、一旦皮疹が改善しても、回数を減らして地固め療法をしばらく行う必要があるということです。

アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024 日本皮膚科学会より引用
2)タクロリムス(プロトピック®)
タクロリムス軟膏は、副作用の懸念などからステロイド外用薬では治療が困難であったアトピー性皮膚炎の皮疹に対しても高い有効性を期待できます。本剤の薬効は薬剤の吸収度に依存しており、塗布部位およびそのバリアの状態に大きく影響をうけます。特に顔面・頸部の皮疹に対して高い適応のある薬剤として位置づけられている、一方で、びらん、潰瘍面には使用できないので注意が必要です。
タクロリムス軟膏には、16歳以上に使用可能な0.1%軟膏と2~15歳の小児用の0.03%軟膏があり、2歳未満の小児には安全性が確立していないため使用できません。成人での0.1%軟膏1回使用量の上限は5gとされ、小児では体格に応じた設定をし、体重をもとに、0.03%軟膏の使用量は2~5歳(20kg未満)で1回1gまで、6~12歳(20kg~50kg)では2~4g、13歳以上(50kg以上)は5gまでとされています(1日1-2回塗布)。しばしば塗布部位に一過性の灼熱感、ほてり感などの刺激症状が現れることがありますが、これらの症状は使用開始時に現れ、皮疹の改善に伴い消失することが多いです。体幹、四肢を対象とした本剤(成人用0.1%)の有効性はストロング(III群)のステロイド外用薬とほぼ同等であると考えられます。強力な薬効を必要とする重症の皮疹を生じた部位に使用する場合には、原則としてまずベリーストロング(II群)以上のステロイド外用薬により皮疹の改善を図ったのちにタクロリムス軟膏に移行するとよいとされています。なお、2週間使用して効果があらわれなければ中止してください。
副作用
局所の有害事象として、灼熱感(ひりひり感)、かゆみ、赤み等が確認されていますが、皮疹の改善に伴って軽減、消失することが多いです。その他、細菌による皮膚二次感染、ウイルス感染症(単純ヘルペス、イボなど)等、皮膚感染症の出現に留意してください。タクロリムス外用薬塗布によって血中にタクロリムスが検出されますが、血中への移行に起因する全身的な有害事象や毒性は確認されていません。皮膚がんなどの合併も報告されていません。
処方例:
成人 0.1% 1回5gまで 1日1-2回塗布 1FTU=0.25g
小児 0.03% 2-5歳(体重20kg未満) 1回1gまで 1日1-2回塗布
6-12歳(体重20-50kg未満) 1回2-4gまで 1日1-2回塗布
13歳以上(体重50kg以上) 1回5gまで 1日1-2回塗布

プロトピック軟膏を使用される方へ使用量の目安 マルホ
3)デルゴシチニブ(コレクチム®)
デルコシチニブは、種々のサイトカインのシグナル伝達に重要なヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、JAKファミリーのキナーゼ(JAK1、JAK2、JAK3およびtyrosine kinase 2)をすべて阻害し、免疫細胞の活性化を抑制して効果をあらわします。
中等症以上の成人アトピー性皮膚炎患者を対象とした第3相試験で、デルゴシチニブ0.5%軟膏群では基剤群に比べて皮疹スコアの有意な改善がみられ、2歳から15歳までの小児アトピー性皮膚炎患者を対象とした第3相試験では,デルゴシチニブ0.5%と0.25%は基剤と比べて皮疹を改善させる効果が高かった。外用局所の副作用として、毛包炎やざ瘡、カポジ水痘様発疹症、単純ヘルペス、接触皮膚炎が報告されています。また、6カ月以上の小児(乳幼児)にも使用が可能になりました。
成人では「1日2回、1回の塗布量は0.5%製剤5gまで」、6カ月以上の小児では「小児0.25%製剤の1回あたりの塗布量は5gまでとするが、症状に応じて0.5%製剤も可能、体格を考慮すること」、「塗布は体表面積の30%までを目安とすること」などの用法・用量を超えないようにしましょう。なお、4週間使用して効果があらわれなければ中止してください。
処方例:
成人 0.5% 1回5gまで 1日2回 1FTU=0.5g
小児 0.25%(生後6ヶ月以上)
1回5gまで 1日2回 症状に応じて0.5%
*ただし、症状が改善すれば0.25%へ戻す
*1回あたりの塗布量は体表面積の30%までを目安とすること。


コレクチム軟膏をお使いになる方へ 鳥居薬品株式会社
4)ジファミラスト(モイゼルト)
ジファミラストはホスホジエステラーゼ(PDE)ファミリーのうち、PDE4に対して選択的な阻害作用を示す薬剤です。PDE4は多くの免疫細胞に存在し、cyclic adenosine monophosphate(cAMP)を特異的に分解する働きを持つため、PDE4を阻害することで炎症細胞や上皮細胞の細胞内cAMP濃度を高め、炎症性のサイトカイン及びケモカインの産生を制御することにより皮膚の炎症を抑制します。ジファミラスト軟膏は複数の臨床試験でプラセボ(偽薬)と比較して皮疹や瘙痒などの臨床症状を有意に改善させることが示されています。外用局所の副作用として色素沈着障害、毛包炎、かゆみ、膿痂疹、ざ瘡、接触皮膚炎が報告されています。
ジファミラスト軟膏の使用は、通常、成人には1%製剤を1日2回、小児には0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗布しますが、症状に応じて1%製剤も使用可能です。ただし、改善したら0.3%製剤にもどしてください。塗布量は、濃度に関わらず皮疹の面積0.1m2あたり1gを目安とします。妊娠可能な女性には本剤投与中及び投与終了後一定期間は適切な避妊を行うように指導し,妊婦又は妊娠している可能性のある女性に対しては使用しないことが望ましいです。
処方例:
成人 1.0% 1日2回 体表面積当たり1g または1FTU=0.35g
小児 0.3%(生後3ヶ月以上)
1日2回 体表面積当たり1g、症状に応じて0.5%
*ただし、症状が改善すれば0.25%へ

モイゼルト軟膏.jp 大塚製薬
5)タピナロフ(ブイタマークリーム)
タピナリフは、アトピー性皮膚炎(12歳以上)と診断されている患者に使用可能で、芳香族炭化水素受容体(AhR)を活性化することにより、炎症性サイトカインを低下させ、抗酸化分子の誘導から皮膚の炎症を抑制するとともに、皮膚バリア機能を改善します。さらに、神経反発因子SEMA3A発現を誘導してかゆみ神経の伸長を抑制し、かゆみを軽減します。クリームであることと、1日1回の塗布で良いため、べたつくことなく、伸びが良い。副作用に、頭痛、毛包炎、かぶれなどがあります。

ブイタマーをお使いになる方へ 鳥居薬品株式会社
処方例:
成人および12歳以上の小児 1.0% 1日1回 1FTU=0.5g
