食物蛋白誘発胃腸炎:FPIES(Food Protein-induced Enterocolitis Syndrome)(エフパイス)

 ~乳児期、特に卵開始時の卵黄で起こる気づきにくいアレルギー反応に注意しましょう~

 厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」では、卵は離乳開始後、生後5〜6か月頃から少量の固ゆで卵黄を耳かき1杯程度から始めることが推奨されています 。卵黄はアレルギーが起こりにくいとされているのに対して、卵白はアレルギーの原因となるタンパク質(オボアルブミン、オボムコイドなど)が多く含まれるため、生後7〜8か月頃から少量ずつ加熱して与えるのが安全と言われています。しかし、最近、上記のように固ゆで卵黄少量から開始したにもかかわらず、嘔吐や下痢などの報告があり、食物蛋白誘発胃腸炎(エフパイス)が注目されています。特に注意が必要なのは、生後6か月ごろの離乳食初期に卵黄を始めたあと、数回食べた時は大丈夫だったのに、その後、繰り返す嘔吐や下痢を起こす場合です。

 FPIES(Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome:食物蛋白誘発胃腸炎)は、1990年代の終わり頃から世界的に発症が増加しています。主に、生まれてすぐの新生児から乳児が多いものの、成人での報告もあります。新生児や乳児では、原因となる食物(粉ミルクなど)を摂取してからしばらくして、嘔吐や血便、下痢などのお腹の症状、また体重が適切に増えない、などの症状がみられます。従来のじんましんや咳・喘鳴など一般的な即時型食物アレルギー(IgE依存性)の症状がないことが特徴の1つです。

①急性食物蛋白誘発胃腸炎

・原因食物を食べて1-6時間程度で出現する。

反復する嘔吐、水様性下痢、ひどく元気がないなどが主な症状。

・重症例では、血圧低下やショック症状を呈します。

原因食物の摂取を中止すると速やかに症状はなくなるため、原因食物は比較的推定しやすいです。

②慢性食物蛋白誘発胃腸症

 食物抗原摂取後に2週間以上続く下痢、体重増加不良などを来たす慢性疾患である。小腸病変を主体とし、2次性乳糖不耐症などを伴う。これらでは、原因食物を食べてから症状が出るまで1日~数週、また原因食物を除去してから症状がなくなるまで1日~数週かかると言われており、原因食物を特定するのに時間がかかる場合があります。自宅での食事の内容が記載された食物日誌などを参考にしながら、原因食物を推定します。

原因食物:

 FPIESの原因となる食物は個人差がありますが、乳製品、米、卵黄、魚、豆類などが報告されています。特に離乳食初期に卵黄を摂取した後に症状が出るケースも増えています。

*FPIESの原因食物として、日本の小児では鶏卵(141人:58.0%)が最も多く、大豆(27人:11.1%)、小麦(27人:11.1%)、魚(16人:6.6%)、牛乳(15人:6.2%)、貝(9人:3.7%)と続いていました。

*発症月齢の中央値は、鶏卵7.0ヶ月、大豆6.0ヶ月、小麦8.0ヶ月でしたが、牛乳は1.0ヶ月と他の食物と比較して早く発症していました。一方で、魚は36.0ヶ月、貝は48.0ヶ月と発症が遅い傾向にありました。

国立成育医療研究センター「 日本の小児における食物タンパク誘発胃腸炎の実態が明らかに ~解析対象の半数以上が、鶏卵が原因。魚や貝も原因となる~」より引用

検査・診断:

食物たんぱく誘発胃腸症(消化管アレルギー)は、

原因と疑う食物を除去して症状が改善すること(食物除去試験)、

原因と疑う食物を再度開始すると再び症状が出現すること(食物負荷試験)、

他の疾患にあてはまらないこと、を確認し診断します。

 こどもではお腹の症状や体重増加不良を生じる疾患が他にも数多く存在するため、他の疾患がないか初めに十分確認することが重要です。そのため、血液検査、便検査などの他、必要に応じてレントゲンや腹部エコーなどの画像検査、消化管内視鏡検査をおこないます。なお、症状が重症の場合には、それらの検査と並行に、治療(原因と疑う食物の除去、点滴による栄養、代替栄養剤の使用、など)を早期に開始することがあります。

 一般的な即時型食物アレルギー(IgE依存性)で使用される治療薬(抗ヒスタミン薬、アドレナリン点鼻液(ネフィー®))は、食物たんぱく誘発胃腸症(消化管アレルギー)の症状に対して無効であることに注意が必要です。

治療方針:

 食物たんぱく誘発胃腸症(消化管アレルギー)と診断されたら、原因食物の除去をおこないます。粉ミルク(乳)が原因の場合には、代わりに高度加水分解乳やアミノ酸乳といった栄養剤を使用します。食物除去によって栄養素が不足しないよう、病院の管理栄養士と相談しながら、適宜栄養素の内服や補助食品などを併用します。 

予後:

 一般に予後は良好で、乳児期に耐性を獲得する小児も多く、本邦では1歳で半数以上、2歳で9割前後が耐性を獲得できている。

 当院では、このアレルギーの疑いのある方は、愛知医療センター名古屋第二病院小児科と連携して治療にあたっています。気軽にご相談ください!

参考:国立成育医療研究センター「食物たんぱく誘発胃腸症(消化管アレルギー)」HP

   国立成育医療研究センター「 日本の小児における食物タンパク誘発胃腸炎の実態が明らかに ~解析対象の半数以上が、鶏卵が原因。魚や貝も原因となる~」HP

   日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021 第16章消化管アレルギーとその関連疾患」

Chat GPTにて作成